
最初に言っておきます。
設定は、かなりぶっ飛んでいます(笑)
でも読み終わったとき、なぜか胸がジーンとします。
Uターンで地元に戻ったサラリーマン・芽生は、
幼なじみのリンゴ農家・琳と再会する。
久しぶりの、少しぎこちない距離感。
そして琳の畑でもいだリンゴの種を
口にしたことをきっかけに、
芽生の体にありえない異変が起き始める。
どんな異変かは、読んでのお楽しみ。
ただ一つだけ言うと
——それは偶然じゃない。
琳には、芽生への忘れられない記憶が2つある。
初めて育てたリンゴを芽生に「おいしくない」と
はっきり言われたこと。
そして子どもの頃、2人でした「受粉ごっこ」
その延長で琳は思わずキスをしてしまったこと。
芽生は驚いて走り去ってしまう。
琳はそれを「拒絶」だと受け取ってショックを受けてしまう。
それからずっと、疎遠のまま大人になった。
琳は自分の初恋を、雷に打たれて枯れかけた老木に重ねて、
何年もかけて育て続けた。
接木を何度も繰り返して、
枯れさせないように。
まるで自分の気持ちを、木の中に閉じ込めるように。
その老木に、ある日たった1つだけ実が成る。
2人でそれを食べたとき、物語が動き出す。
この作品がずるいのは、
ぶっ飛んだ設定の中に、
やけにリアルな感情が宿っているところ。
琳の重くて不器用で
ちょっとズレた想いは、
全部「ずっと好きだった」
という一点に収束している。
そして芽生も、最初から琳のことが好きだった。
すれ違いじゃない。
両想いのまま、離れていた2人の話。
だから琳が芽生に「触れる」場面は、
いやらしさよりも
——ようやく手が届いた、という感じがする。
何年もかけた初恋が、
リンゴという形で芽生の中に実って、
琳の想いがようやく届く。
「収穫」が、そのまま愛の成就になっている話です。
こんな人におすすめ
・王道BLに少し飽きている人
・クセ強めの設定が好きな人
・笑えるけど感情の高まりもほしい人


コメント