
今日は、少し重ためのレビューになるかもしれません。
BLという枠を超えて、
「心が壊れること」と
「生活が崩れること」を描いた物語だからです。
ときめきを求めている日には、
もしかしたら向かないかもしれません。
でも
静かに寄り添う優しさを求めているなら、
きっと刺さります。
物語は、
ゴミ屋敷と化した鎌倉さんの部屋に
野球ボールが飛び込むところから始まります。
それをきっかけに、
部屋の状態が明らかになり、
大家から退去を言い渡されてしまう。
片付けを手伝うことになったのは、
下の階に住む荒井くんでした。
鎌倉さんは、
もともと片付けができない人ではありません。
「あの人、どうしちゃったの?」
ほかの人には突然の出来事のように見えますが、
実はそうではない。
社会生活の中で積み重なった我慢や緊張が、
ある日、堰を切ったようにあふれ出し、
心と生活が同時に崩れてしまったのです。
強いショックを受けたとき、
地面がぐらつくような感覚になったことはありませんか?
視界が狭くなって、
思考がぼんやりして、
何も手につかなくなる。
作者はそれを、
ほんの数コマで描き切ります。
鎌倉さんの心が壊れていく過程は、
決して大げさではなく、
「誰にでも起こりうること」と思わせるリアルさがあります。
地面に一本線を引いた
こちら側とあちら側。
ほんのささいな差しかないのかもしれない。
「ここからどう恋が始まるの?」
そう思うかもしれません。
正直に言えば、
すぐには始まりません。
なぜなら鎌倉さんは、
まず“生きること”を立て直さなければいけないから。
衣食住。
安心。
人が人らしくあるための土台。
それが崩れている状態で、
いきなり恋はできない。
だからこの物語は、
いきなりときめかせない。
まず、生活を整える。
まず、呼吸を整える。
そこから、
少しずつ、人と向き合う。
以前、あるドラマでこんな言葉を聞きました。
「天使が肩に手を乗せるんです。
そっちに行っちゃだめだよって。」
鎌倉さんの部屋に飛び込んだ野球ボールは、
きっとそんな存在だったのだと思います。
止まっていた人生に、
小さなきっかけが転がり込む。
人は人に傷つけられるけれど、
救われるのもまた、人との関わり。
そして、
誰かを助けているようで、
実は自分も救われている。
そんな優しい循環を、
静かに描いた作品です。
安心してください。
ちゃんと恋に辿り着きます。
でもそれは、
“救い”としての恋ではなく、
“生活を取り戻した先に芽吹く感情”。
だからこそ、
とても尊い。
こんな人におすすめ
・心が疲れて、生活が少し乱れてしまったことがある人
・「ちゃんとしなきゃ」と頑張り続けて、
限界を迎えたことがある人
・恋よりも先に、まず自分を立て直したいと感じている人
・人に救われた経験がある、
または誰かを救いたいと思ったことがある人


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