
「この人のこと、好きだな。」
そうやって片想いを自覚した瞬間から、
体の動かしさ方や、視線の向け方、
適切な距離感が急に分からなくなってしまう。
他の人とはスムーズに話せるのに、
なぜかその人の前では、
すべてがぎこちなくなってしまう。
そんな経験は、
誰にでもあるのではないでしょうか。
おまるさんは、
自分の中にあるコンプレックスや、
少し歪んだ感情を扱うのがとても上手です。
この作品では、
無邪気さと執着が、
とても近い場所で描かれているように感じました。
好きな食べ物は何だろう。
好きなタイプはどんな人なんだろう。
何をしているときが、一番楽しいんだろう。
好きな人のことは、
何でも知りたくなってしまう。
好きになることって、
きれいな気持ちだけじゃないよねと思いながら読みました。
片想いや推し活って、
少しだけプチストーカー的な側面があると、
私は思っています。
自分は相手のことをたくさん知っているのに、
相手は自分のことを、ほとんど知らない。
このアンバランスさや、
一方だけに生まれる執着が、
ときに不気味さや、
言葉にしづらい居心地の悪さを生んでしまう。
厄介なのは、
その気持ちが
「もっと知りたい」
「相手を愛しているだけ」
という、とても純粋なところから
始まっていることなんですよね。
振り向いてもらえるなんて、
最初から期待していない。
一緒にいて楽しい時間を共有したい人と、
一方的に知っているだけで満足してしまう人。
その小さなズレが、
もどかしくて せつない。
『垣根と境内』は、
好きだからこそ分からなくなってしまう距離感や、
踏み越えないと決めた優しさを、
とても誠実に描いた物語だと思いました。
こんな人におすすめ
・好きな人の前で、距離の取り方が分からなくなったことがある人
・片想いや推し活の中にある、きれいじゃない感情に覚えがある人
・「踏み出す勇気」よりも、「踏み越えない選択」に心が動く人
・美しいだけの恋でなく、人間くささに魅力を感じる人
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※このブログでは、実際に読んで
「お金を出してもよかった。」と思えた作品だけを紹介しています。


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