夜明けの唄 感想(ネタバレなし)|簡単に朝が来ない世界で、夜明けを待つ二人

1_心がほどけるBL

本文 冒頭

この物語は、
夜がすぐに終わらない世界で、

それでも夜明けを待つことを
やめなかった二人の話です。

この物語の舞台は、
黒海に囲まれ、外の世界へ出ることができない島。

夜になると、
黒海は人を襲う存在へと変わります。

そのため島では、
覡(かんなぎ)と呼ばれる者たちが、
人々を守る役割を担っています。

覡は、普通の人間よりも強い力を持ち、
白い髪、額に刻まれた花の紋章、

そして手足には
墨痣(ぼくし)と呼ばれる黒い痣があります。

夜な夜な海に現れるバケモノと戦うことが、
彼らの務めです。

覡の体に刻まれた墨痣は、
日に日に広がっていき、

やがて全身を覆ったとき、
その命も尽きてしまうとされています。

印象的な言葉

「寂しさで、人は弱り、死ぬんだ」

という言葉が、
とても印象に残りました。

私には、
覡の孤独に呼応するように、

墨痣が広がっていくように
感じられたからです。

物語の構造パート

この物語は、
三つの立場が静かに並んでいる物語だと感じました。

守られている側の人々は、
「世界はこんなものだ」と疑うことなく、
与えられた平和を当たり前のものとして受け取っています。

一方で、
愛する人を守るために、

既成概念を疑い、
この世界の在り方を知ろうとする存在がいます。

そして、
使命と、自分自身の幸せのあいだで、
揺れ続ける存在もいます。

同じ世界を生きていても、
立っている場所が違えば、
見えている景色はまったく違う。

そんなことを、
静かに突きつけてくる物語だと思いました。

中心人物

物語の中心にいるのが、
覡として生きる青年・エルヴァと、

彼を想い、問い続ける少年・アルトです。

物語の進み方

この作品は、
一冊ごとに劇的な変化が起きる物語ではありません。

同じ場所で、
同じ夜を、

何度も越えながら、
関係を確かめ続けていく物語です。

すぐに救われるわけでもなく、
簡単に答えが出るわけでもない。

それでも、
誰かと一緒に夜を生きるという選択が、
確かな意味をもって積み重なっていきます。

BLという枠に収めてしまうのが、
少し窮屈に感じるほど、
物語としての強度が高い作品です。

簡単に朝が来ない世界でも、
誰かと一緒に夜明けを待つという選択は、
それだけで確かな意味を持つのだと感じました。

物語はいまも続いていて、
この先、二人がどんな夜を越えていくのか、
静かに見届けたいと思っています。

こんな人におすすめ
・誰かを守ることと、自分の幸せを願うことの間で
 揺れた経験がある人
・「正しさ」よりも、立場の違いから生まれる葛藤に心が動く人
・BLをジャンルとしてではなく、物語として深く味わいたい人
・すぐに答えが出ないとき、誰かと一緒に進路を探していきたい人

▼この作品を読む
〔書影+リンク〕

※このブログでは、実際に読んで
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